2014年3月18日火曜日

奴らの名前はSHADOW、SPEEDY、BASHFUL、POKEY…?


 海外動画ざっくりまとめ。様々なゲームのトリビアを紹介している Did You Know Gaming? シリーズより、今回は発売から34年目になる『パックマン(Pac-Man)』について取り上げている。




Pac-Man - Did You Know Gaming? Feat. Guru Larry


 『パックマン』は1979年、当時のナムコが開発したアーケードゲーム。名前の由来は擬態語「パクパク」から。生みの親である岩谷氏によれば、その頃は『スペースインベーダー』など、戦争や破壊を題材にしたゲームばかりだったため、女性などのカジュアル層でも楽しめるようなゲームを目指してつくられたとのこと。「食べること」を基本コンセプトとし、キャラクターデザインは漢字の「口」という字や切り分けたピザの形から連想したと言われている。

 当初、国内での英語表記はPUCK MAN(アイスホッケーのパックに似ているから)だったが、アメリカで展開する際、「落書きされてPをFに書き換えられるとマズい」という理由でPAC-MANという表記に変更された。また、当初はATARI社に販売協力を打診したものの「難易度が低すぎる」という理由で断られたため、結局MIDWAY社がライセンスを獲得し、大ヒットとなった。

 敵のオバケに個性があるのも特徴で、例えば「アカベエ」はパックマンをひたすら追いかける、「ピンキー」と「アオスケ」はパックマンの前方に回り込もうとする、「グズタ」は基本的にパックマンを追いかけるが近づくと左下に向かって移動する(※)…などなど。この特性はゲーム中でも「オイカケ」「マチブセ」「キマグレ」「オトボケ」というように表記されているのだが、英語版を見てみると、それぞれ"SHADOW"、"SPEEDY"、"BASHFUL"、"POKEY"と原文の意図が伝わりづらい翻訳になってしまっている。このためアメリカでは「敵の移動はランダム」だと思い込んでいたプレイヤーも多かったのだとか。

 岩谷氏が『ポパイ』を参考にしたと語るパワーアップのシステムや、ステージクリアごとに表示されるカットシーンなどを見ても、『パックマン』が現在のゲームに与えている影響は計り知れない。アメリカの一般消費者における認知度は94%とも言われ、スミソニアン博物館やニューヨーク近代美術館にも展示されているほどだ。

 1982年にはアメリカで「パックマンをクリアする方法」と銘打った攻略本も発売されたが、そもそも『パックマン』には「クリア」もエンディングも存在しない。256面に到達するとバグってしまい続行不可能になってしまうからだ。1999年にはビリー・ミッチェル氏が、理論的に考えられうる最高得点333万3360点を記録した。6時間かかったという。

 その人気と知名度は未だ衰えず、2010年には誕生30周年を記念して、実際にプレイ可能な『パックマン』のGoogleロゴがお目見えした。 多くの人間が仕事中にプレイした結果、経済損失は120万ドルにまで及んだらしい。

 そんな『パックマン』の続編として登場したのが『ミズ・パックマン(Ms. Pac-Man)』だ。もともとは"Crazy Otto"という名前の、単なる『パックマン』の類似ゲームだったのだが、開発会社が販売許諾を求めたところ、なんとMIDWAY社がこれを承認。『パックマン』の世界観やコンセプトに合うよう変更が加えられ、見事発売となった。一方で80年代には許可を受けていないパクリゲーも数多く出回り、一説には類似品をすべて合わせると、正規品の『パックマン』シリーズと同等の売り上げになったとか。

 このような歴史的な名作を生み出した岩谷氏であるが、大々的に注目されることはあまりなかった。「わずか3500ドルのボーナスを受け取ってゲーム業界から身を引いた」という噂まで流れたほどだ。もちろん噂はデマで、岩谷氏はその後もナムコに残り同社を牽引し続けた。ただし、岩谷氏はボーナスについて「特別なものをもらった記憶はありません。半年に一度のボーナスに表彰金が含まれていたとは聞きましたが。」 と答えており(※※)、どうやら待遇に関しては噂と大差なかったようである。

 今や『パックマン』の正式な続編やスピンオフ作品は30を超える。2007年には、Xbox360用ソフト『パックマン チャンピオンシップ エディション』の発売を記念した大会も開催された。初代『パックマン』で最高得点を叩き出した例のビリー・ミッチェル氏も参加していたが、なんと2回戦で敗退。優勝はメキシコ代表のカルロス・ロメロ氏で、賞品であるパックマン仕様のXbox360が岩谷氏から手渡された際、「eBay(オークション)に出品しないように!」と釘を刺されたそうだ。岩谷氏は「このゲームを私が手がける最後の作品にする」と語ったという。


※岩谷氏は2011年のGDCで「グズタの移動は完全にランダム」と発言しているが、実際のプログラムソースを見ると上記のようなパターンがあるとのこと。
※※動画内の英語を翻訳しているため、実際の日本語での発言のニュアンス・表現とは異なる場合がある。



  「理解しやすいコンセプト」と「直感的な操作」は、女性やカップルをターゲットにした『パックマン』以降、「ワニワニパニック」から『塊魂』に至るまで、ナムコの多くのゲームの根底に流れている理念だ。個人的にこういう方針のゲームは大好きなのだが、なにぶん日本よりも欧米ウケの方が良い(コアなファンを生みやすい)ようで、どうしても国内と国外で評価に隔たりが出てしまうのが残念。今回取り上げた動画を見る限り、『パックマン』も日本国内での評価はアメリカほど高くないように感じる。

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