2013年7月7日日曜日

ゲームが救った? ある青年の人生


 海外Kotakuの記事ざっくりまとめ。おそらく独立記念日に合わせて、関連する過去の記事をトップに持ってきている。






Video Games Gave Him the Chance to Prove He Is American
(「彼はアメリカ人だ」―ゲームが証明)



  主人公はアメリカに住むJosé Muñozという25歳の青年。一見すると、同年代の若者たちと何ら変わりない青年なのだが、実は1歳のときにメキシコから家族で移り住んできた移民であった。入国時にはビザを取得していたものの、ビザが失効した後も本国に戻らずアメリカに住み続けた。つまり不法滞在者である。学校では、最初こそ英語学習者向けクラスに入れられたが、すぐに通常クラスに編入させられ、やがて上級クラスへ。そこでは常に疎外感を感じていたという。


 Joséは幼い頃から、自分たちがアメリカ国民ではないとわかっていた。「父さんが家に帰ってきて母さんに言うんだ。「チェックされるからあそこじゃ働けない」って。それでもう大体察しがついちゃったんだよ。」
 不法就労者にとって「チェックされる」ということは、その勤務地に大きいバツ印をつけねばならないことを意味していた。I-9 form(就労資格確認書)にアメリカ国民であると虚偽の申告をしたことがバレた場合、どうあがいてもそこで終了となってしまう。永久に認可を受けられなくなり、国籍を取得する機会を完全に失ってしまうのだ。見てみぬふりをして、不法就労者と知りながら現金で給与を支払ってくれたり、あるいは証明書なしでも国民とみなしてくれたりする職場もあるが、そういう仕事は大抵進んで就きたくないものばかりだった。


 彼は高校卒業後に一旦は大学に進学した。だが市民以外の人間に対する学費は高額で、さらに上述したように卒業しても就職できる見込みがないため、結局ドロップアウトし、家に閉じこもりがちになった。しばらくは家族の手伝いや弟の送り迎えなどもしていたが、やがて持っていた運転免許証(制限付き)が法律改正によって更新不可能に。完全に家に引きこもり、ゲームをするだけの毎日となる。父親のクレジットカードでXbox Liveのゴールドメンバーシップアカウントを作成。昼はテレビとネット、夜はラスベガスに住む従兄弟とXbox Liveでチャットをしたりゲームをして遊ぶ日々。ゲームはダウンロード購入した。『マッデンNFL』『FIFA』シリーズなどのスポーツゲームから、『ライオットアクト』、『ギアーズ・オブ・ウォー』シリーズへと興味を広げ、「もうゲーム以外にお金を使わなくなった」という。


 彼の気持ちはどんどん沈んでいき、気分を紛らわせるのはもはや従兄弟との会話だけとなった。そして最終的にカウンセリングにも通うようになる。「僕は子供の頃に連れて来られただけだ。自分で選んだわけでもないのに、なんで僕が罰を受けなくちゃいけないの?…そんな気分だったよ。」


 だが、そんな彼に転機が訪れる。オバマ政権のもと、DACAという政策指針が打ち出されたのである。DACAとは、子供の頃に入国した移民の退去措置を延期するという政策で、以下の条件に当てはまれば運転免許証も学費支援制度も就労許可も得ることができるようになるというものだった。
 ・16歳以下でアメリカに入国し、現在31歳以下である
 ・高校の卒業証書か一般教育終了検定証書を持っている(あるいは現在取得を目指している)
 ・過去5年間国内に居住している


 Joséはこれらの条件すべてを満たしていたが、一つだけ問題があった。3つめの条件「過去5年間国内に居住している」ことを証明するものがなかったのだ。代理人は頭をひねる。通院していたことはないか?歯医者にかかっていたことは?


 ― やがてJoséの母親がつぶやいた。「ゲームはダメですか?この子ゲームしかやってこなかったんです。」


 Joséは、人生に行き詰まりソファの上で過ごしていたあの日々にXbox Liveでダウンロードしたソフトの購入履歴を、すべて残していた。履歴は21ページにもおよび、彼が2007年にアメリカにいたことを示していた。さらに2008年、2009年、2010年、2011年、2012年と、すべてが同じ住所で記録されていた。体験版やトレイラー、ダウンロードしたものから既に消去したものまで、アバターアイテムやテーマ、『ギアーズ・オブ・ウォー』のマップパックやUFC Undisputedの選手パック。それらは決して無為に過ごした6年間の残骸などではなかったのだ。


 こうして彼は「申請書に添付した書類に加え、嘘偽りないX-Box 360での購入履歴を提出いたします。」と宣誓供述書に書き添えた。といっても、DACAは書類審査の明確な基準が決まっているわけではなく、担当職員の裁量によるところが大きい。不慣れな若手職員でもダメ、融通のきかない年配の職員でもダメということで、あとはこの購入履歴が居住証明として認められることを祈るしかなかった。さて、結果は…タイトルの通りである。現在彼は、免許証を更新し、保険にも入り、仕事を二つ掛け持ちしているという。稼いだお金はゲームではなく家族を養うために使いたいそうだ。たとえ一時的なものだとしても、これが幸せな人生のスタートとなればいいのだが。



元記事: 3/17/13 11:00am
http://kotaku.com/5990963/video-games-gave-him-the-chance-to-prove-he-is-american




 いい話に水を差すようだが、今回はたまたま証明するものがゲームの購入履歴だっただけで、別にゲーム自体の本質的な要素が何かプラスの影響を与えたということではない。記事タイトルを「ゲームが証明した」と訳してしまったが、実際は「証明する"機会を与えた"」が正しい。「Xbox Liveのアカウントが証明した」にすぎないのだ…
 いずれにせよ、ゲームを通して社会問題が透けて見えたことは間違いない。移民の問題はその子孫にまで傷跡を残すということがよくわかる。また、Kotaku記事のコメント欄では「ウチは合法的に移住して税金まで払ってるのに、ただゲームしてた奴が優遇されるなんて不公平だ」という意見もあり、なかなか一筋縄ではいかないようだ。

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