2013年7月8日月曜日

ジョーカーは精神病院に入れない


 海外Kotakuの記事ざっくりまとめ。いわゆる「精神異常者」をどう扱うのか?心の病と暴力性との関連は?などの疑問を『バットマン アーカム・アサイラム』での悪役たちの描かれ方を通して考える。
ジョーカー





What Arkham Ayslum Gets Right And Wrong About The Criminally Insane
(『バットマン アーカム・アサイラム』の精神異常者 嘘と真実)



 人間は二種類に分けられる。責任能力のある人間と責任能力のない(もしくは低い)人間だ。「精神異常者」においては、前者は精神病質(Psychopathy)、後者は精神病(Psychosis)と分類される。


 精神病とは、思考が支離滅裂で現実と虚構・空想の区別がつかない状態のこと。妄想・幻覚・幻聴などと共に不可解な行動をとる。道徳的判断ができず、自分の行動が犯罪かどうかすら理解できていない。例えばハーレー・クインは、バットマンこそ「悪」であり、ジョカーは自分を愛してくれていると信じきっている。誤った思い込みや錯覚を基にして起こした犯罪の場合、刑事責任を問うことが難しい場合がある。


 一方、精神病質ASPD(反社会性パーソナリティ障害)と呼ばれるものは、現実から乖離したりしない。自己中心的で衝動的、共感能力や罪悪感の欠如といった特徴があるものの、その行動は極めて合理的だ。特に、キレやすく、社会的ルールを守らない傾向がある人間を「サイコパス」と呼ぶ。例えばペンギンは頭が良く理知的で、自分の目的のためなら他人が犠牲になろうと意に介さない。DCコミックに登場する有名どころの悪役はほぼこちらのグループに属する。この意味で、少なくとも自分の行動が社会的に「悪いこと」だと認識しているジョーカーは精神病質であり、刑事責任が発生する。そして、そもそもこのような精神病質・パーソナリティ障害・サイコパスといったものを「精神障害」に含めていいのか?ということについても、精神医学界では論争になっているらしい。


 以上のことから言えるのは、「アーカム・アサイラム」には刑事責任に問える者と問いにくい者がごたまぜになって収監されているということだ(もっとも、現実でそういうケースが全くないわけではない)。また、精神病と違って、精神病質・サイコパスの治療法は全く確立されていない。そもそも「病気」と呼ぶべきかどうかさえ論争になっているくらいなのだから。精神病院に入れたところでジョーカーを心優しい人間に変えることはまず無理なのだ。したがって、残念ながら『バットマン アーカム・アサイラム』における精神疾患の扱い方は現実とは違うと言わざるをえない。


 では、精神疾患のある人間の暴力性についてはどうか?心の病を持つ人間は狂暴になるのだろうか?心の病にも様々なものがある(例えば薬物中毒なども含まれる)が、ここでは精神病の典型的な症状、統合失調症で考えてみよう。いきなり結論から言うと、答えは「NO」だ。現実に心の病を持つ人々は、攻撃側に立つよりも、被害者になることの方が多い。薬物乱用で暴力的になる人間もいるが、大多数は犯罪者になることはない。「精神病患者は狂暴で恐ろしい」というイメージは実際の傾向とは異なっている。


 秋にはまた『バットマン』シリーズ最新作がリリースされる。正しい理解があればきっとゲーム体験がより豊かなものになるはずだ。



元記事: 7/04/13 5:00pm
http://kotaku.com/what-arkham-ayslum-gets-right-and-wrong-about-the-crimi-663072771




 ジョーカーが精神病か精神病質かは作品によっても見方が変わると思うが、少なくとも『バットマン アーカム・アサイラム』での行動を見るかぎりは、単なるサイコパスと診断されるということだろうか。
 フィクションの設定に「リアルじゃない」とケチをつけるこういう記事は野暮かもしれない。ただ、いまだにネット上で様々な病名が罵声代わりに飛び交っている現状を見れば、メディアが特定の病気や患者に対する誤ったイメージを植えつけてしまう危険性を指摘することにも意義があるように思う。

 …そしてどうやら記事の分類にしたがえば、この人に法的責任が発生する可能性は低そうだ。(ネタバレ)


ウォーカー大尉

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